妊娠から死産まで2 「デキ婚からの始まり」
妊娠が発覚したのは、5月10日(火)の夜。
なんとなく尿の匂いがいつもと違うと感じ、仕事終わりに妊娠検査薬キットを買って家に帰ってきた。
「まさかね。期待して陰性な可能性もあるよね」
そう思って尿をかけたら、1分くらいでうっすらと線が入った。そのうちはっきりと線が浮き出て「陽性」と確定。
過度に期待はしていなかったが、胸の中の風船が破裂したような感覚だった。
衝撃半分、喜び半分。
相手は、今年で4年付き合い同棲中の彼氏だ。
結婚の約束はしており、付き合った記念日の11月に入籍しようかと話をしていた時の妊娠の発覚だ。
排卵日を意識して生活はしていたが、旅行中にゴムを忘れてしまい、性行為を及んだという思い当たる節はあった。世間では、デキ婚はふしだらだとか、順番がおかしいとか、マイナスな印象が強い。でも、その時は正直、この人となら妊娠しても大丈夫、という謎の根拠があった。正直なところ、順番はどうでも良かった。好き同士で一緒にいるんだから、順番になぜ囚われるのかと。男女関係、結婚している者同士と同じ。未来をともにする覚悟があるなら、順番に囚われず愛しあって何が悪いのかと。
(今でも、この考えを否定するつもりはない。ただ日本の行政手続き上、デキ婚はとんでもなく書類整理や事務作業が面倒くさいことを後に知る事になる)
ゴールデンウィークに彼氏を親戚のバーベキューに招待し、家族に紹介していた。
うちはサマーウォーズ並に親戚が多く、交流も多い。親戚や従兄弟に馴染んでいた彼氏を見て、心の底から大丈夫だと安心したこともあった。体操のインストラクターをしている彼は、子供と関わることが多く、扱いもうまい。親戚のちびっ子達と遊ぶ彼は、良い父親になるだろうと確信もした。
そんな仕事から帰ってきた彼にすぐキットを見せながら「妊娠した」と報告。
「おお!」の一言。
意外とあっさりした反応だな、と思えば
「俺もついに父親になるのか」とニヤケた顔。
私は「順番逆になっちゃったね」と笑いつつ、彼の手をお腹にあててもらった。人より脂肪が厚めの私。すでに多少ぽっこりしているお腹を、彼は優しく撫でてくれた。
この瞬間から、私達は夫婦になったと思った。
私は妻へ。彼は夫へ。
この瞬間から、私は母親になり、彼は父親になったと思った。
それぐらい、あの日の喜びは忘れない。
それぐらい、幸せな瞬間だった。